アメリカ、カリフォルニア州、サクラメント川 ~~ 至福のザリガニ食べ放題

サンフランシスコから内陸に向けて続くサクラメント川のそばに、友人が犬と家族とともに住んでいた。

広い庭には船着き場があり、モーターボートが留めてある。

この川は、ザリガニが豊富にいる。彼らはこの川でザリガニを獲り、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフの店に卸していた。

ザリガニは、クローフィッシュCrawfish と呼ばれるが、このエリアではクローダッドCrawdadと呼ぶ。彼らがザリガニを獲っていた方法は至ってシンプルだった。

道具は、金網のカゴを仕掛けとして使う。長さ60cmくらいの円筒形で、横長部分に開閉式のフタがあり、両端が、内側に向かって狭くなる入口になっている。一度入ったら出られないような仕組みである。

エサには、缶入りのドッグフードを使う。缶の両端を何か所かキリで突いて穴を開け、カゴに放り込む。水中に入れると、中身がジワジワと溶け出して、その匂いに釣られてザリガニ達がカゴに入ってくるらしい。カゴのフタをしっかり閉めて、準備ができたカゴをロープで繋いでいく。これを何セットか作る。

出来あがった仕掛けをモーターボートに積み込み、夕暮れ時に出発した。川幅はもともと広くないのだが、次第に細くなり、水草があちこちに生い茂る場所に到着。ボートを一旦留めて、少しずつ移動させながら、連なったカゴを水の中に沈めていく。これで完了。すべてのセットを水に沈めて、帰宅する。

明朝、再びボートで同じ場所に戻る。朝の風は爽快だった。仕掛けておいた場所に着いた。カゴを引き上げてみると、中でザリガニが動き回っていた。ひとつのカゴに3匹から5匹くらいが入っている。すべてのカゴを撤収して戻る。

通常はこれを生きたまま売りに行くのであるが、その日は、そのままみんなの口に入ることになった。

獲れたてのザニガニを、大鍋に大量にぶち込んでまるごと塩茹でする。茹であがったザリガニがバケツに山と盛られて出てきた。頭は食べず、身の部分のみ殻をむいて食べるので、見た目に比して一匹分の食べられる量は一口サイズだ。

殻をむいて頬張り始めると、ノンストップである。ひとりバケツ一杯ずつ食べた。それも、みるみるうちになくなった。

その後友人は引っ越してしまい、この体験はできなくなってしまった。サンフランシスコに行くたびにフィッシャーマンズワーフにも何度か行ったけれど、このときの茹でザリガニのような喜びは味わえない。獲り過ぎてもいけないのだろうから、食べ放題はもはや、まぼろしの贅沢なんである。

Photo by Logan Ellzey on Unsplash